今年も、国語に興味のない小学男子に読書感想文を書かせる季節がやってまいりました。
ちなみにわたしの親は教育熱が過ぎており、親が手を入れすぎてる読書感想文を毎年「書かされ提出させられた」パターンでした。賞はもらえても自尊心はズタズタ、今でもみうらじゅんばっかり追いかけてるという後遺症が残りました。
そんなわたしが、読書感想文を子ども本人の気持ちに沿いつつまぁ~まぁ~それなりに仕上げてる手法、みたいのを書き残しておこうと思います。
読む本は、子どもが気に入るものが見つかるまで探す
学年ごとの課題図書が毎年選出されますが、子ども本人が興味を持てる本であることが一番重要に思います。
学校側の縛り次第ですが、課題図書でなかったり既に持っている本でもかまわない。
課題図書と同等(かそれ以上)のボリューム・漢字量は必要でしょうが、最後まで&何度か本人が読み込めるものでないと、なかなか文章が進まないものです。
大型書店で気が利いてるところだと、課題図書コーナーにはテーマと関連性のあるオススメ書籍も陳列されています。
今夏は課題図書コーナーの様子を冷やかしに行ったところ、こちらの本のオビを凝視しておったので、ちょっと目次や冒頭を立ち読みさせてみたところ、グッと引き込まれていたようでした。キマリ。
この様相(本を手に取った動機)も、掘り返せば感想文のネタになります。
ふせんをつけながら読ませてみる
昔の小学校では、夏休み直前に突然「書け。」っつって、僕らに経験値はおろかひのきのぼうすら持たせず課題図書と戦わせてきたもんですが、この頃の小学校ではちゃんと攻略プリントをくれるようです。
読書感想文に限らず、あまり経験のない課題において必要なものは以下。
- お手本となる完成品
- だいたいの枠組み
攻略プリントには、過去の受賞作文いくつかと、本を読みながら押さえたほうがいいポイント(心に残る場面など)をメモれるよう、ワークシートが用意されていました。
ワークシートがなくても、感想文において骨組となるポイントはだいたい以下。
- その本を手に取った理由、動機
- 自分と比べたところ(共感できるところ、または違いに驚いたところ)
- その本が読者に伝えたいであろうこと
うちでは大き目のポストイットを用意して、
「本を読んでいる間に浮かんだ思いや考え」
「印象に残った文章、場面」
についてはすぐポストイットに書いてそのページに貼ってもらうようにしています。
が、使ったふせんの量は多くても感想は「すごいと思った」ばっかりだった。
【残念なお知らせ】ポイントを自分で細かく掘り起こして文章にできないのが、子どもです。
感想文を書けなくて困っている子どもがいて、よそ様に指導を頼まない場合、
もちろんですが指導者(親)も同じ本を読んで、上記3ポイントとして何が挙げられそうか思いを巡らせておきましょう。
感想が浅いだろうから誘導尋問してみよう
感想文の指導者がとるべき手段は、指導者による創作ではなくて誘導尋問です。
子ども時代の経験から進言しますと、親が優等生的なプロットをうっとりしながら子どもに書かせた文章は先生にもPTAにも即バレする上に、クソつまりません。
(昔はそれでも受賞率が高かったみたいですが、今は子どもらしい素直なリアクションや自分の経験に裏打ちされた文章がウケるみたい。実際面白いし)
さて
例えば、息子がこの本を手に取った動機として、表紙のうち凝視していた箇所が「子ども兵士・ムリアの告白」のところだ、という点だけが最初にわかりました。
わらにもすがる思いってコレか。
ここをもっと掘り下げてみたら面白いかなと思ったので、逆算的に、ふだんの生活に絡んでいるところや子どもが本を読んでいるときのリアクションをベースにしながら、ゆるやかに穏やかに語りかける形で尋問していきます。
- 子どもが兵士になる、という点が不思議だったのかな?
- 戦争はたいてい大人同士でするものだから、「子ども兵士」という言葉に疑問をもったのかな?
- 普段、戦争のことは低学年から国語の教科書で取り上げられているし、夏だとよく朝のニュースでも取り上げられているから、過去に日本でも過酷な戦時状況があったことは知識としては知ってるよね?
- でも、この本を読んだことで、いま現在でもよその国では戦争がまだある、子どもたちが兵士として参加している、という事実があることを知って、けっこうびっくりしてる?
・・・といった具合。
子どものやる気を削いだら、おそらく夏休み最終日まで原稿用紙に向かってくれなくなるので、テレビの刑事モノで言えば「仏の〇さん」を自らに憑依させる感じで尋問しましょう。
YESである点だけを拾っていって、ふくらませます。
もしも子どもがこれを全て文章化できたのならば、けっこうな量を書けそうです。
てきとうな原稿用紙にどんどん下書きさせる
作家センセイではありませんが「筆が進む」みたいな瞬間もありそうなので、本を手に取った動機からスタートさせても構わないから、間違って書いてもいい原稿用紙を用意してばんばん書かせてみます。
その前に書いたふせんを並べてみて、いくつかのグループに分類できればしめたもの。
ウチの場合は、ふせんの内容が「少年兵の残酷さ」「少年兵の更生に必要なこと」「その国の現状」「自分にとって当たり前の生活(平和さ)」に分かれていたので、動機の他にそこも含めて書いてもらいました。
文章は構文だけを手直しする
こうして仕上がった下書きはだいたいヒドイので、子どもの意見・感想の内容は曲げないようにしつつ、文章としておかしなところだけ指導していきます。
例えば同じようなことを繰り返し書いていればカットするし、「だから」「そして」がなくても通じればカットするし、言い回しがクドければすっきりカットする。
小学校からは原稿用紙3枚分という掟を言い渡されていたので、こうしてカットするたびに「減る!」と泣かれましたが
カットしたぶん他のところを掘り下げてふくらませて追加していくと、面白い文章になりました。
・・・そんな過程をもとにママンであるわたしも、この本の読書感想文を原稿用紙3枚分にまとめてみましたよ。
「怖いもの見たさから、社会への眼差しが始まってもいいじゃない」
40さい マリーアントワ・アザレ
息子は生まれながらに不安の強い子で、他人とのかかわり合いが苦手です。
登校するだけで精一杯だし、ちょっとした挨拶や対話をやらせようとするほど荒れて、年頃に不相応なぐらいに泣きます。ふつうの子なら笑い飛ばせるようなことを深刻にとらえがちで、ひどいときには自分自身を殴っています。
この平和な日本で、自分自身の問題だけでいっぱいいっぱいな子ですが、学校教育のおかげで「日本で戦争があった時代」のことを知り、夏休みになれば終戦の話が朝のニュースで語られることもあって、少しずつ社会にも目が向いてきたような印象を受けます。
子どもというものは、まだ受け入れきれないうちから妙に「恐ろしいもの」「怖いこと」に気を惹かれるところがあります。
「この本の著者はちょっと前にニュースにいっぱい出ていた、ISに殺害されたジャーナリストだよ」と教えても「ぜんぜん覚えてない」とぬかしやがっていましたから、戦争のことは、知識としては知っていてもぼんやりと遠い国の他人事として捉えていることでしょう。
著者が危険な国でインタビューをした結果この本が生まれましたが、もしそれが無かったら、少年兵やそうだった子どもの実態を私たち親子が知ることもなかったでしょうし、この夏にわたしと息子でそれについて意見を交わす時間もなかったことでしょう。
それだけでも良かったかな、と今は思っています。
この本を通して、息子の心に芽生えてほしかったことはいろいろあります。
「少年兵ムリアが背負ってきた過去・今とても真面目に通学している姿を感じて、自分が普段から深刻に捉えている悩みはけっこう小せぇ~な~、と思ってほしい」
「ムリアの夢(大統領になって国を平和にすること)みたいに、プロゲーマーでもなんでもいいからでっかいカンジの夢をもってほしい」
「ムリアのように、過去の痛みを忘れることはできなくても、前向きに強く生きてほしい」
こういった思いがないか聞いてみても、「そういう考えは無かった」と一蹴されてしまいました。
人間の本質は変えられないという言葉をしばしば目にしてきましたが、息子の場合はどうしても、不安さ・弱さがそれであるように思います。
そこを変えようとして今までに何度も失敗してきたことを、また思い出しました。
人間ってそういうもんだよね、と寄り添わなければいけないのでした。
この本を通して、世の中でつらい思いをしている誰かに対していたわりの眼差しを持ってもらえれば、それで充分なのかもしれません。
・・・夏の読書感想文コンクールに「ママンの部」もあったらいいのになぁ。
これ、ブッチギリでもらえるわ。参加賞が(≧▽≦)
※今週のお題「読書の夏」