アート展示を新しい価値観との出会いとして楽しんでいます、二児の母です。
今回は、茨城県土浦市というドいなかでマイ新聞を刊行し続けていたら岡本太郎賞というものすごいアートの賞を受賞された、矢口祥子さんの個展を紹介します。
個展入口からもう、ごっついマスコットがぶらさがっていました。
この空間がとんでもない手づくり感に包まれていることを示しています。
展示の壁一面には、へりが激しくコラージュ装飾された「矢口新聞」が並んでいます。
矢口さんがすごいのは、
密度の高い圧倒的な手づくり感を、ドーン!と まんま出ししているところ。
ともするとわたしたちは、ものを作るにあたって、素人さや下手さをなんとかカバーしようとし、おしゃれ見せしたくなるものです。
矢口さんはとっくにそういうことを無視していて、何より土浦という住まいの場所が好きで、お店のことを書いたり日常のことを書くことを、激しいほど楽しんでいる。
どんなジャンルにおいても、すべてを忘れるほど熱中できることを見つけた人は
素晴らしいアーティストであると思います。
今回の展示会場では、足元にまで土浦のマップが再現されていて、見る側の全身が、激しい色彩と筆致に包まれます。
あやしいながらも、手描きのほっこり感にグイーーッと引き込まれ、展示された膨大な「矢口新聞」を読んでは笑ったり癒される。
新聞には土浦のおいしいお店の話もけっこうありますが、わたしは「家の湯舟に漬かっていたこうもりをどうにかしようとする回」がとても面白かったです。
矢口さんは、我々現代人ならでは、テレビ漬けネット漬けライフを送ってきた会社員だったのですが
東日本大震災で大好きなフィギュアスターや様々なかたが、被災地を応援している動画を見るようになって
「なんもしてないわたしが、水道で水もらい放題、動画見放題しているなんて
ひじょうに申し訳なさすぎる!!!」
と強烈に思ったんだそうです。
で、いやな通話を避けるべく携帯を最初に手放したあとは、テレビ、PC、時計も手放す暮らしをはじめます。
もうひとつ、わたしが矢口さんをすごいなと思ったポイントは
大好きなイラストレーターさんや衣装デザイナーさんの活動をしっかり追っていて、直接出会えるワークショップとの縁をつかんでいったところです。
有名な作家さんに対して、「この人の作品好き~」とオンライン(SNSなど)で追っかけてる人は多いし、大抵はそのぐらいで終わっちゃうもんです。
矢口さんは、本当に好きな人に直接会いに行って、自分がつくったものに対して嬉しい言葉をかけてもらっている。
それって、すごいモチベーションと自信になりますよね。
矢口さんの作品を観ていると、
とにかく、好きに、なんでも作っていいんだ!
という彼女の達観を受け取ることができます。
会社もやめて
「これからは、わたしが本当にやりたいことをやる人生にするんだ!!」
とキョーレツな一念をもって暮らしを変え、そのことによって周りの人も変えていく。
(これが、かえるかわる子 の由来)
矢口さんの信念には圧倒されるばかりです。
わたしは表現者になるより先に家庭をもったことで、「自分以外の人の価値観を受け入れながら暮らさざるを得ない、という不自由さ」を感じることが多いです。
なので、矢口さんが捨てた便利なものが実は私達に不自由さを生み出していること、
それらを捨てるのはなかなか出来ることではないこと、
自由を得た中で ちゃんと本当にやりたいことをガシガシやっていること、
について、改めて考えさせられました。
スマホもってたら、ついどうでもいいものばっかりフォローして時間がなくなっていくし、わたしなんかは目もどんどん悪くしてますからね。
そんな自分も、(ドいなかとか書きましたが)実は土浦は学生時代を過ごした思い出深いスポットでした。
「矢口新聞」に登場する土浦の新しいスポットなどについて、お話を聞けただけでもひじょうに楽しく、当時の思い出がじわじわと蘇りました。
土浦はれんこん生産量日本一です(が、あまり知られていません)。
れんこんは、ドロから生まれて美しい花を咲かせるもののたとえとなる植物。
今回の記事タイトルにドロとつけたのは、そんなれんこんの生きざまが矢口さんとリンクするように感じられたことと、矢口さんの土浦愛や素手感を表現するものです。
【今回の個展情報】
◆矢口祥子さんのFacebookページ