本読んでまとめる、二児の母です。
うちの子の「認知のゆがみ」問題を振り返る記事(note)を書いていたのですが、
それと同時期に読んだ脳科学の本がおもしろかったので紹介したいと思います。
なお、こちらの本は
「会社の上司・部下という関係の中で、話を伝える」
など、わりと社会人向けの切り口となっています。
ですが、わたしはこれを「家庭内での親子・夫婦関係でも使えるテクニックだ」と考えました。
この記事ではそのような視点でお伝えします。
【もくじ】
- 伝わりにくさの要因は、相手側のコレ
- ASDのわが子から:伝える手前で分かっておくことがある
- 言葉をみがく前に、相手の特性を研究しよう
- バイアスはみんなにあって、ストレスのもとになる
- やっぱりそうか!命令よりも効く声かけのヒント
- 自走できる人を育てるために
- 家庭で足並みをそろえる手助けとして
伝わりにくさの要因は、相手側のコレ
「この話、なんども言ったのにな・・・伝わってないな」
「わたしはこういう伝え方しかできないんだけど、そのせいでまた相手を怒らせてしまったな・・・」
発達の特性がある人が家庭にいるとなおさら、こういうパターンがよく出てきやすいかもしれません。
あるいは、
発達の検査について認知度が薄い時代だったため、なんらかのグレーな特性を抱えていてもケアがなされてこなかった、いまの子育て世代。
認知症がはじまったかもしれない親。
さまざまな人に対して「伝わりにくい話のしかたがあるなぁ」と実感する瞬間が、しばしばあります。
実はそれ、単に気遣いや努力が足りないわけではありません。
それぞれの人が持っている
- バイアス(思い込み)
- 脳のタイプ
- 価値観
が影響することを、この本では解説しています。
ASDのわが子から:伝える手前で分かっておくことがある
ASD(自閉スペクトラム症)の特性をもつわが子が、相手を極端に悪者扱いする “思い込みフィルター” に苦しんでいたときに「認知行動療法」を受けていたのですが。
これをきっかけに、子ども自身が、できごとの見え方を自分の価値観でガチガチに固めていたことを、少しずつ自覚していきました。
(この話を書いたnote)
“人はみんな、それぞれ違う脳のフィルターを通して世界を見ている”
なんて、言われたら当たり前なのかもしれませんが、
たまにわが子のように極端なフィルターを持っている人もいます。
認知行動療法では、「こういう見方もあるよ」と伝えていく時間が主になっていたことを思い出します。
いまこの本を読んで、「伝える」という行為や、伝える以前のところで意識したほうがいいことが明らかになり、
当時のカウンセラーがしてくださっていた様々なこととつながって、納得感が生まれました。
言葉をみがく前に、相手の特性を研究しよう
脳のタイプという言葉は、わたしたち発達障害児家族にとっては、比較的なじみのある言葉かもしれません。
ただ、定型発達・非定型発達に関わらず、
「動画やテキストみたいに目から入れる勉強法だと、よく理解できるなあ」
といった特性が、それぞれの人にあって当たり前だと思います。
この本は、相手と伝わり合う良いコミュニケーションのために、
言葉をみがくよりも前にまずは相手の頭の中を知ったほうがいいよ、という提案から始まります。
バイアスはみんなにあって、ストレスのもとになる
ひとは自分の考え方や経験に基づいて、ものを言うし行動するものです。
子育て中に
「自分はすぐこうやるのに、どうしてあなたはできないんだ!」
という怒りは、子どもに対してだけでなく、パートナーに対してもよく起きるものですよね。
「大人なんだから、わたしができるこういうことは、同様にできて当然なはず」
これもまた、"わたし" が持つバイアスです。
相手の行動は、その人が持つバイアス・脳タイプ・価値観から起きています。
(そして、上にも書きましたが、それはわたしたち自身についても言えるのです)
なので、
話を聞いてもらえる信頼感をつくれるような普段の接し方が大切であるし、
これら3点をやんわりと探れるような働きかけといったベースをこさえた上で、
スッと相手の心に入るような伝え方をする必要があるよ、とこの本では解説されています。
伝える力とは、相手の脳へ届けるための工夫の力であり、
「どうやったら相手に届くだろう?」と常に意識することが大切なようです。
やっぱりそうか!命令よりも効く声かけのヒント
この本では、
コミュニケーション力が高いとはどういうことか?をわかりやすく定義しなおし、
誰にでもできる方法へと落とし込んでいます。
それらのうち、特に重要なものを以下にざっくりと挙げてみます。
✔︎「命令」よりも「問いかけ」を
自分で考えたことのほうが、人は覚えて、動けます。
また、質問に答えた内容は、自分ごとになります。
✔︎ 伝えにくいときは、たとえ話でやんわり
「あなたの言い方はキツいよ」ではなく、
たとえでふわっと伝えると受け止めやすくなります。
✔︎ 小さな「できた!」を積み重ねよう
成功のハードルを下げて「できた体験」を見つけて声をかけると、
脳が「できるかも」と感じて、次の一歩が軽くなります。
発達障害児関係や子育てにまつわる本の内容と、ひじょうに近いものがあるなと感じました。
これは、発達の特性という切り口で子育てを考えるときに、やはりその子どもならではの脳の仕組みを理解しようという発想に返ってくるからともいえます。
自走できる人を育てるために
子どもへの接し方について、さまざまな専門家の意見を集約すると
「命令で子どもをコントロールするよりも、ゆくゆくは自立をめざすことを考えて、
自分で考えて行動できるように持っていこう」
というアドバイスになるのですが、これと今回の本の内容は濃くつながっています。
この本は、社会人が仕事先での対人関係(一対一)やチームづくりの役にたつ読み物として、手に取りそうな造りをしています。
が、一見子育てとは関係なさそうな仕立ての本からも知識の支えを得ることで、
大人であり親でもある読者が、より的確な「伝え方」について理解と納得感を高めることができるように感じました。
家庭で足並みをそろえる手助けとして
この本は大人同士のやりとりが主な事例となっていますが、
「伝える」とは身近な人間同士、たとえば親子の間や夫婦の間などでいくらでも生まれるアクションです。
この本は、「まず、理解しようとする姿勢がすべての始まり」と繰り返し教えてくれます。
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人はみな、違うフィルターを通して話す
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だからこそ、“違いを認識する” ことが第一歩
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問いかけやたとえ、成功体験の工夫が、信頼と理解につながる
こうした視点をもって “問いかけで伝える家庭” にしていけば、
気づけば家族全員が、安心して自分を出せる「チーム」に育っていくんじゃないかと思わせてくれた一冊です。
note記事ではこれに関連して、「認知バイアス」や「認知のゆがみ」という視点で家庭や支援について掘り下げています。
併せてご覧いただけるとうれしいです。