ママちゃんは最強漬け。

子どもの発達特性や不登校などの課題に寄り添うママの備忘録

誰でも使える、暮らしのハードルをとにかく下げる術 - 「発達障害サバイバルガイド」

発達障害の子を育てて20年の母です。

今日は、発達障害ADHD)当事者による、生活の工夫大全・決定版!!! と呼ぶべき本を紹介します。

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こちらは、著者 (ADHD / ASD) が、不器用である自身の実感をベースに

「こうやったら便利になったよ」と生活の工夫を具体的に解説している、ためになって妙におもしろい一冊です。

自分を変えるのではなくやりかた・道具・環境を変えてどうにかやっていくのだという本書の発想は、発達障害の人を支援する考え方の大前提であると思います。

 

この記事のもくじ

 

悲惨なのに何故かおもしろい

大人が指導をするテイで、発達の問題を抱えている人のために生活の工夫をまとめた本は、けっこうあります。イラストが多用されていてわかりやすく作られていますが、当然、おもしろい感はないです。

 

本書では、著者の自虐的な語り口に加えて、自身がどーもくんの口をしたゆるいくま(イラスト)として描かれているのが絶妙です。

たまにウォーと過集中になったり病んだり大泣きしていたり、本人からしたらひじょうに大変であろう状況を、読み手はコミカルにも受け取れるような振り幅があります。

うつの人に対して真摯なメッセージを含ませながらも、エンタメを楽しむ感覚もほんのり持ちながら、そして「これ役に立つじゃん」が満載なうちに読み切れる一冊です。

 

生活に必要なシーンをほぼ網羅している


生きるためには仕事を続けていくことが必須で、その土台は健康でいられる生活を回していくことです。

人が生活をするときの必須ポイントとして、

  • お金の使いかた・消費額チェックのしかた・貯めかた
  • 汚れものをためない習慣・環境作り
  • 休息をきちんととること
  • 在宅ワークをちゃんとやりとげられる環境作り
  • 社会人としての服選び
  • 自炊をこなす(味付けなど)

この辺りのやりかたを全部網羅しているところが秀逸です。

また、わたしは普通の親として生活を無事に回してきたつもりでしたが、考えが足りていなくて非効率なことをやってきたなと反省する箇所や、ためになるから真似しようと思った箇所がありました。

著者には、人よりもつまづきが多いからこそ、暮らしを面倒にしている小さなハードルに気が付くことができるというグッドポイントを感じました。

 

実は本書、最新のAmazonサイトで見ると帯に「10万部突破」と書いてあり、聞いたところによるとそうそう出現するもんではない発行部数のようです。ひじょうに多くの人が参考にしている状況がうかがえます。

ダメになっていった&改善していった人だから言えること

この本では第一に、お金の使い方として「ある程度の設備投資をしろ」と提言がなされます。そこひとつとっても、

  • 生活を快適に回すために必要なことは何か
  • それがないと、どう生活がダメになってしまうのか

など、長年のトライ&エラー&どうにかうまくいった経験をベースに、段階の話もていねいに交えながら、様々な角度から説明されているので、説得力があります。

 

わたしは特に、「これができないとこうなる→洗濯物がたまる」といった、汚部屋が仕上がっていく段階をくっきりトレースできるのが、興奮するほどポイント高いなと思いました。乱暴な言い方になりますが、夏ですし、くさいひと全員に読んでほしいです。

子育てしてる側から見た、この本で役立ちそうなシーン

本書は「不器用さが強い社会人が、ひとりで生活を回していくには」というテーマで書かれています。ですが、以下のようなシーンにも参考になる点が多いと感じました。

  • 発達特性があってもなくても、片付けや集中が苦手な子どもの部屋づくり
  • 上記のような子どもの、おうち以外での学習環境づくり(学校や放課後デイサービスなど)
  • 保護者自身の、とっちらかった室内環境の手直し

親が元気なうちに、子どものやるべきことを全部やってあげることは、手軽ではあります。が長い目で見たときに解決策にはなっていないな。。と、わが身を振り返っても思うところです。

 

いつか、(よほどの事情がない限り)子どもが自分で生活を回していくときは来ます。

そのために、

  • 本書が提唱する「超意識低い系」つまり誰でもすぐに真似ができるちょっとしたこと、を知っておくこと
  • 早めに当事者と共有しながら環境を作っていくこと

は、子どもの将来的リスクを回避できる大事なやりかたであるように思います。

おまけ(著者の仕事術の本)

著者である借金玉さんは先に下記の「会社員としてやっていく術」の本を出していて、そちらも話題になりました。

会社の人たちを部族と見なし、(人付き合いのやりようが分からなくても)ほどよい距離をもって付き合っていく考え方・やりかたが分かりやすく提案されています。

当時から一貫している、あまたの泣く夜を超えて前を向く「やっていきましょう」という言葉がとても良いなと思っています。

最近発達障害関連の本を読んでいて、当事者からのお話がじつに具体性があって貴重だと思うようになりました。また新しいお話が聞けることを期待しております。