万年筆インク画家です。
最近は黒い背景の上に繊細な線を描いたりしてみたかったので、お絵かきアプリ "Autodesk sketchbook" を使って描いていました。デジタル画を手描きのようにすいすいと気持ちよく描けて無料(驚)。
子どもの頃は、親の仕事用PCである旧型白黒Macの小さいディスプレイを見ながら、右手でマウスを持ってドット絵を描いてたりしてたんで、すごい未来きてるなぁと思います。
デジタルで描いたほうが、色合いがしっかりして目立つ絵になりますし、ネットへの投稿も楽です。対して、万年筆インクは水でにじんだり日光で褪せたりするので保管に気を使わないといけないし、描いた絵を見えている色どおりに撮影・スキャンするのも難しい。色合いが繊細すぎる。
そう。繊細すぎるところが好き。
ガラスペンにつけたインク量の度合いや水でのぼかしによって、自分の予測した以上の色合いをインクが出してくれる瞬間がある。
それが、たまらなくやさしい色合いであったりもする。
怨念情念恨み憎しみをどろどろに煮込んでいる状態に陥ることもある。それでも常にこの手からはやさしい絵しか生まれてこないのは、そんな万年筆インクの力に拠るところが大きい。
この世に「在る」画材で、まだこの世に「ない」やさしい美しいものを生み出したい。
そんな思いで幾つかねずみにまつわる画を描き、東急ハンズ主催の年賀状コンテストに応募したところ、ひとつが一次審査を通過しました。エントリー80作品中、投票によって選ばれた40作品が製品化されます。
すべてのエントリー作品を拝見したところ、やはりおしゃれでくっきりと目立つデジタル画が殆どでした。わたしの作品ははっきり言って目立たず、俯瞰したら少々がっかりもしました。自分だったら〇番に投票するわとか。
しかしわたしは、このねずみさんの顔をすいっと描けたときに、これが自分に合っていて自分にしか描けないものだと確信をもったことを思い返します。
受け取ったひとが、まだ寒い気候の中でも
心がほわっとあたたかくなるような年賀状を。
やさしい気持ちを、ぶれずに「強く」持つことはできる。
瞬間的なものかもしれないけれど、わたしの中においてやさしさと強さは共存し、それを結晶のように固めて保存しておけるものが絵なのでしょう。
このまま、いつも前に進んでいけたらと思います。
28番です。投票やシェア、お待ちしております。
https://printing-service.jp/vote2019/
#「迷い」と「決断」
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2019 年秋、この作品は同コンテストにて優秀賞をいただき、全国の東急ハンズ店舗およびインターネットサイトにて販売されました。こちらを読んでくださった皆様、応援してくださった皆様に、深くお礼申し上げます。
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