ママちゃんは最強漬け。

栄養療法とグルテンフリーをガンガンに調べて実践するママの備忘録

アスペルガー児の中学受験

今年の2月は気が抜けちゃって(あんだけ闊歩していた)チョコレート催事場をスルーしている、二児の母です。

 

うちの子は、ぱっと見はふつうの子ですが発達障害児発達障害にもいろいろあり、この子は「アスペルガー症候群」にすごく近い。いわゆるふつうの子とは違う、発達の偏りがあります。

この子とちょっと関わると「空気が読めない子だな」という印象を持つことでしょう。

実際には「人同士の "空気" "雰囲気" といったものを経験で知ってゆくことができない」と言うほうが近い。

人とどう関わったらいいのか、常識を1つ1つ教えていかないと理解ができないタイプ。そして手先がかなり不器用。出来ないことが多く、それに対して年齢相応より幼く号泣し、その間は手が付けられなくなる。

ただし勉強という作業には苦がなく、興味が強い。

 

中学受験を決めた理由

公立小学校の先生とは、しばしば面談をしてかなり手助けしてもらいました。

クラスメイトも、だいぶこの子の特徴を配慮して助けてきてくれましたが、

・・・集団生活の中では親の知らないうちに何度も何度もつまずきがあり落ち込んで、ほんの少し「ちゃんとやってくれよ」とむくれたクラスメイトに対して異常に怯え、いつしか周囲と自分との絆を絶っていたようです。

気が付いたときには、授業参観でみたグループ学習の場でも、誰とも一切目を合わせず口を聞かない子になっていました。

 

高学年を迎える頃に、こちらでは学校の選択肢が多いこともあって

「小学校のクラスメイトがほとんど行く、近くの公立中に進学する?
それとも、受験してよその中学に行く?」

とたずねてみたところ

「知っている人が誰もいない中学校へ行きたい。人間関係をやり直したい」

と言ってきたので、中学受験をすることを決めました。

それが小5の終わり頃。

 

もう1つの受験理由 - 学習ルーティンは出来ていた

この子は幼い頃から、できる課題・できない課題の差が激しい人。

できない課題(例えば自由課題 - 好きに道の絵を描いてみよう!とか)に関してはパニック的な嫌がりを起こしたりして心配だったので、それらを包括した家庭学習教材であるZ会(難しめの通信添削)を園の年長時からやらせてきました。

家庭学習のほかに自由時間もかなりあったのですが、学校のあとに外に遊びに行くことをしない子で、(うちに同級生を呼んだり色々やってみたのですが)同世代の子どもたちは近所にけっこういるのに、関わり合いを次第に避けてゆくように見えました。

「じゃあ、・・・武器として勉強を磨いてみる?」

という問いかけに対してYESであったので、以降ずっとZ会を続行。

小4からはその中でも難しい中学受験コースに切り替えることで、とりあえず受験するかどうするかはわからないけど武器に磨きをかけることに。

ひたすら毎日、自分から取り組んでいました。

 

この子の特徴として生真面目すぎる点があり、設定されたタスクをこなすことが安心感につながるようです。

「少し先のことに気を回す」ことは一切できないので、勉強スケジュールは親がよく見て本人と一緒にカレンダーへ書いておかないといけません。

が、カレンダーに書いたタスクに関しては、自ら毎朝6時に起きてZ会1科目をこなしていました。

(ただし、朝の課題がひとつでも難しくて解けなかったりすると、異常に号泣したり自分自身を殴ったりして、かえってそのために学校へ登校できなくなりそうな日もありました)

 

ちょっときつめのことを言われるとどうなるか分からない子なので、

進学塾のふつうの先生(=ふつうの子たちを相手にしている先生)にそこまでの理解を求める気にもなれず、塾には一切通いませんでした

ただし大手2社の小6用模試は、全部行かせました。
テストを受けてくるだけなのでコミュニケーション的なトラブルが想定されませんでしたし、いつも会場になっているビルの近場にナポリ・ピッツアの美味しいレストランを見つけたのも功を奏したようです(ちょうど同時期に「ジョジョの奇妙な冒険」第5部にハマっていたため)。

 

そんな感じで、外に出ていかず比較的高度な勉強をひたすらこなす子、と向き合う小学校6年間でした。

小6になってからはZ会の内容の進みが早く・また内容も濃くなり、難しい問題に対して号泣して手が付けられなくなる頻度も高かったです。

「結局のところ、荒れている最中になにを言っても頭に入らないようなので、時間に任せて本人が落ち着くまで待つしかない」が身に沁み込んでいくばかりの日々でした。

 

しかし、日々の蓄積はあるもので、彼は自力で解ける問題が増えていったんです。

特に算数はすさまじく、最終的には志望校の過去問をいつも9割は正答していました(合格ラインは6~7割なのに)

 

志望校の決め方

中学受験をマジでやろう、と小6の春に決めて以降、とにかく合同説明会などに足を運びましたが、学校情報を納得のいくまで収集する時間はかなり少なかったです。

(ちょっとでも中学受験の可能性を考えているなら、小4ぐらいから学園祭に遊びに行って部活や校舎の様子を見てみるとか、いろいろ学校見物をしてみることをおすすめします。楽しいし)

うちの子の特性を考えた結果、以下のような視点で学校を絞り込むことができました。

 

  • 通学がラク
    ほぼ引きこもりで行動に応用が効かない子が遠出の通学をする、ということには流石にリスクがあるなあと思いました。
    「近場」「乗り換えが少ない」といった通いやすさを重視したところ、いくつか校風やカリキュラムに興味を持てる学校が出てきました。

  • カウンセラーが常駐している
    ぶじ入学できたその後からがまた問題になることは目に見えていたので、これは大きなポイント(安心要素)になりました。

  • 学校説明会での個別相談コーナーで話をしてみた
    個別相談コーナーでは、副校長先生や実際に教鞭をとっている先生がたと二者面談ができます。
    あらかじめ子どもの特性を伝え、そういう子どもが入学してきた実績があるか・どう対応されているかを聞いてみました。
    どの学校もひじょうにフェアに答えてくれ、また「(今回お子さんの名前を記録に残していますけれども)ここでご相談いただいたことは、試験の合否とは関係ありません」と断言してくださいました。
    そこで好感を持てたのも、志望校にした理由になったと思います。

  • 特別支援校
    引きこもりや発達障害など、特別な配慮が要る子のための中高一貫校というものも存在します。そこも受験候補に入れました。
    受験というスタイルをとってはいますが、学科は簡単で、ただし面接・授業体験・集団行動観察といったサブ審査があり「この学校での集団生活はできそうな子、は選ばないといけないんです」といった配慮は見られました。
    とても優しい雰囲気の学校と先生がたで、ここにさえ辿り着ければ間違いなく、本人は毎日つらくなく学校生活を送れるだろうなとは思ったのですが・・・・

    △ちょっと遠い
    (電車とバスの乗り継ぎあり。しかもバスに酔いやすい)
    △授業が簡単すぎる
    (レベル別授業にはなっていますが見学させていただいたところ、どうしても「息子の武器が錆びる」感が拭えませんでした
    △設備が古く、不十分
    (わたし個人的に、図書室が充実している学校に好感を持つのですが、ここの図書館をなんとなく見学させていただいたところ・・・絶対に子どもを行かせたくないと思いました。)

  • 本人の意思
    本人にアスペルガーであることを告知していませんが、上記のような「優しい支援校」と「ふつうの私立」どちらがいいかを受験直前に相談したところ
    「世の中の役に立つ人になりたいから、(一番難しい私立志望校)に行きたい」
    とはっきり言いました。
    親も本人もいろいろ不安に思うところあれど、学校は本人に選ばせるのが一番いいのかな、と思いました。

苦手な科目への工夫

できる科目にはやはり偏りが強めにあり、特に苦手だったのは国語と社会の地理・公民。
本人が「すぐ取り組めて、すぐに終わる」ぐらいの課題を用意&スケジュールして、手を尽くしました。あとは以下のような感じで。

  • 漢字の書き取り
    シャープペンシルを試しに使わせてみたところペン先が滑りまくってきれいな字が書けていなかったので、鉛筆に切り替え、丁寧に書くよう毎日声をかけ、終わったら親子で見直してきれいに書けているか確認しました。
    漢字を覚えるには「同じ漢字を何度も書くこと」が基本だと思うのですが、それがすごく嫌いで号泣していたので、無理させず「5回ぐらい書けばヨシ」と早めに切り上げさせました。
    心配でしたが何年もZ会の国語課題を続けていたら、どの字も書けるようになりました。

  • 国語のことわざ・慣用句・四字熟語
    読書習慣がなかったこと(反省)、加えて他人との接点が少ないため語彙というか日本語の一般常識が少なかったことから、
    「ことわざ参考書」「慣用句参考書」といった1つのジャンルに特化した参考書を1つずつ買って、空き時間に読ませました。
    参考書はいつも、本人と一緒に中身を見て選びました。
    4コマ漫画やイラストが全ページに載っていると、気軽に読めるようです。

  • 公民と地理
    Z会の課題は細かくて量が多く、とにかく興味がなくて覚えづらかったようなので、いかに基本を落とさずおさらいしていくかに注力していました。
    夏休みには、「基本をすべてさらえる」と表紙に書いてあった赤シート付きドリル本をやらせました。
    それだけだと本当に基本のきしかさらえず、本番の試験に出る重箱の隅をつついたような細かいところには手が届かないことが分かったので、秋以降はポケットサイズの「試験に出る順」みたいな赤シート付参考書を読ませました。
    また、年明けからはZ会の web ドリル(小4~5年のときに習ったもののおさらいプリント)をダウンロードして、「1日に、地理1ジャンル理科1ジャンル」とやらせていました。1ジャンルだと、多くてもプリント4枚ぐらいで終わります。

    苦手分野の勉強は時間で区切るのではなく、「1ジャンル全部やったら休憩」など、短めに区切って休憩させました

 

(社会の歴史は、仮面ライダーゴーストを家族で観ていたら過去の偉人がいろいろ出てきてそこから興味を持ち、イラストつきの人物系参考書を勝手に読み込むところから入っていって得意科目になりました)

 

中学受験当日における留意点

複数の学校を受験しました。

余計なことを想像し始めるとネガティブになりすぎて言動がおかしくなる子なので、試験日の行きに問題集を読ませることもせず(解けない問題が出てきたらその場で号泣とか引き返しをしそうだった)、帰りに「あれは解けたか」といった終わったことに関する話も一切せず、送り迎えでは終始普通の雑談にとどめました。


なお、持ち物については息子と話し合って決め、極力シンプルにしたり早めに普段使いさせたりして、当日使い方に困るものがないように配慮しました。
息子の場合、文具を机から落としたらコミュニケーションを怖がって試験官にヘルプを出せないおそれがあったので、以下を持たせました。

  • 使い慣れた鉛筆を6本(科目は4つでしたが、多すぎてもなくすことを心配する性分のため)
  • 転がらない鉛筆キャップをつけて
  • 100均のビニール製ペンケース(持ち物が見えたほうが安心する、と言うので)
  • 消しゴム3個
  • 削りやすくゴミが外に出にくい鉛筆削り器「ラチェッタ」(文具好きのわたしがたまたま発見)ご参考まで↓

 

 ほか、身の回り等に関してはこんなことに配慮しました。

  • 感染症予防のためマスクは着用
  • 受験票 - 「ある」ことが分かりやすくなるよう、クリアファイルに入れた
  • リュックではなく、学校にいつも持って行っている手提げバッグを使用 - 中身が取り出しやすく、見通しが良いため(文具と受験票しか必要なかったし)
  • 水のペットボトル - 水分補給を日中あまりせず、頭痛の元になっていたので
  • 手袋 - えらく気に入っており、落とすと号泣や引き返しの元になるので、はめて外を歩いているとき以外はずっとわたしが持っていた

中学受験によって得たもの

最初に買った入試案内の分厚い本には、「中学受験は、お金も手間もかかります。なんのためにやるのかを明確に」ということが冒頭にちゃんと書いてありました。

動機は悲しいものでありましたが、最後までやりきったことで「進路は、進む人が決めていいものなのだ」ということを本人や家族が強く自覚した1年間であったと思います。


なお、完全家庭学習型となり、夫が在宅勤務のかたわら理数系を見てくれ、わたしは国社系を担当しました。

うちの子は毎日2科目以上をこなしており、われわれ夫婦は毎日、難しい問題に対して荒れる子の傍についていたり、問題のポイントなどを話し合うことになりました。

それは、本人との濃ゆいコミュニケーションタイムでもありました。
受験をしたことで、息子に対して「勉強内容」というコミュニケーションのネタを得たとも言えます。

 

また、夫婦お互いに「今日はどんな感じで勉強を進めた」といった情報共有をしたり、その中で「こんな感じで荒れた」「わたしもうヤダ」といったネガティブな話題すらしばしばやりとりするようになった(受験期まではお互いに、ネガティブな話題は極力避けていた・・・)ことから、夫婦それぞれががんばった事実によってお互いの信頼感が上がったり、言いづらいことも相談しやすい雰囲気ができた感もあります。

 

最終的にうちの子は、シーズン初期に受験した私立中高一貫校には一次試験ですべて合格。

複数のカウンセラーが常駐しているという志望校に通えることになりましたが、出来ることは本人に任せるようにしつつも、親としてフォローの手をゆるめることはないでしょう。チョコレートでまったりする気分には、まだなれない。