狩れるうちに狩る。二児の母です。
バレンタインデーは、デパートにこの時期だけやってくる世界の珍しいチョコレートを舐めるように吟味してストックするためのイベントだと思っています。
チョコレートに限らずお菓子は、付随するハコや缶といった入れ物のデザインが良いと、それが欲しくて買いたくなることも多いです。
今年、1つめのチョコレート催事場に出かけたときはなんとなく「缶の採集」がテーマに決まっておりまして、それをもとにたくさんのブースを観て回りました。
平日の朝一番だから、とても見やすかったです。
催事場の隅っこのほうにスペインのメーカーのブースがあり、そこはまさに
「缶推し」。
中身は数種類しかないのに、ミニ缶・中型缶・花柄缶よりどりみどり、しかもミュシャなどのアールヌーボー画が渋めなカラーリングで缶化されており、それはもう好みすぎて、長いことブースのガラスケース幅で徘徊していました。
こういうテンションのときには、まず最初に
「もういい。ムチャしても、死ぬ額じゃない。・・・全色買いしよう」
というだいぶ危ない気分になります。
そこから5分ほど注文をがまんして徘徊していると、さらに自分の好みが精査されてきて、もうちょっと絞って買えるようになるものです。
そんな思惑にて右の缶を見ては左の缶を見ぃしていたところ、ご年配の柔らかな声がお隣に降ってきた。
「あらこれ、いいわあ。こちらの(中ぐらいの)缶にはぁ~、お出かけのときに身の回りの?ちょっとした綿棒なんかを入れる。」
まだ買ってもいないのに、缶の使い方を想定する強者があらわれました。
「ホントいいわぁ~。すてきだわぁ~。缶が、いいわぁ~~。」
このかた、わたしの心の声を代弁なさりながら、わたしと同じパターンで徘徊なさり始めたので、ふとそのかたを見てみると、
マスクとニット帽でお顔は隠れていましたが明らかに男性(ご年配)でした。
服装も普通に男性でしたし。外見ではわからないオネエさんって、いらっしゃるもんなんですね。
あまりにも「缶同志」でいらしたので、ついついわたしも「いいですよねぇ、ここの缶」などと一緒に頷き、このオネエさんと同じ方向を見て同じことをずっと喋っていました。
「あたし(!)、チョコはいらないのよ。
食べたくないの、太っちゃうし体に悪いから。
でもでも、どうしても、缶だけ欲しいのよ~~~ねぇ売り子さん、どうにかならない?」
ちなみにわたし自身は、チョコレートは純粋に「おいしく作ってあるものはおいしくいただきます」主義であり「食べたぶんだけ空手する」主義も併用。
「缶だけ欲しいのよ」に対しては売り子さんが返答に困っていたので、このオネエさんに、思い切って向かい合ってみました。
「わたしは自分用の缶入りも買いますけど、良かったら、あなたの缶の中身を買い取りましょうか?
わたしはチョコレートが好きなので、問題ありません。」
「あらぁっ、本当!!?うれしいわぁ!じゃぁ~~じゃぁお願いします」
「缶においくらの価値、つけます?」
「えっ、アラ、どうしましょ、どうしましょ」
うわっ、めんどくせえ~~~!!
アザさんは見た目が女子ですが中身は寿司職人です。
「わかった、もうね、折半で!!」
「ありがとう~~☆
じゃあはい、これわたしの分のお代ね。これでお支払いお願いね。
そうだわ、売り子さんに缶から中身を出すのもやってもらったらいいじゃない」
売り子さんはベテランぽく、わたしたちのやりとりをきちんと見てくださりつつ無駄なことは一切おっしゃらず。スパスパとお会計や仕分けをしてくださいました。
「ホントにありがとう!あなたのおかげ!
願いって、言えば叶うのね~☆」
オネエさんは帰り際キャピキャピしていて、片手を出してきたので、なんかつられてわたしも片手出した流れでカワイイ系のハイタッチをして別れました(≧▽≦)
いや、わたしも、同じテイストの缶が好きだっていう人に出会えて
嬉しかったんでえ、べらぼうめえ。
お会計待ちをしているとき、オネエさんとちょっとだけ話をしていて
「あなた、チョコはいつ食べるの?身体に触るから、午前中にするのよ。」
としみじみおっしゃっていました。
このあとに色々買い込んだのですけど、その教えは守ろうと思います。
※今週のお題「バレンタインデー」